「友人や同僚とはうまくやれるのに、恋愛や結婚のパートナーとはいつもうまくいかない」
「相手が好きなのに、嫌われるようなことをしてしまう」
「優しくされると、落ち着かなくなる」
「本当に愛されているのか信じられず、試すようなことをしてしまう」
「スキンシップやセックスが苦手」
「相手のことがいつも頭から離れず、べったり依存してしまう」
・・あなたやパートナーにこのようなことが当てはまる場合、それは「愛着」の問題が原因かも知れません。
愛着とは・・・?
愛着とは、生まれてからまもなくより、親(または自分を養育してくれる保護者)との一対一の関わりの中で、築きあげていくものです。
人は赤ちゃんのときは、一人では何もできません。すべての面において100%、親に世話してもらって生きながらえます。お乳がほしい、オムツを替えてほしい、だっこしてほしい、といった絶え間ない要求を献身的にかなえてもらうことで、「自分は大切にされている」「自分は愛されている」「世界は安全で自分は守られている」という感覚が身についていくのです。
『愛着理論』の生みの親ジョン・ボウルビィは、そうした愛着行動によってもたらされる「安心」を、『安全基地』と呼びました。
親から無条件愛され、甘えたいときに甘え、頼りたいときに頼ることができ、ありのままを受け入れてもらって育った子どもは安定した愛着スタイルを身に付けます。
大人になると心の安全基地がしっかり自分のなかにあるので、つらいことがあっても自分の感情をしっかり感じて適切な対処ができます。人とぶつかることがあっても、自分の意見もいい、相手の意見も聞いて仲直りできます。傷ついたり、頑張ったのにうまく行かなかったということがあっても、ちゃんと落ち込んでまた起き上がれるチカラを持っています。
パートナーとの関係でも、相手を信じて自分の気持ちを素直に表現したり、相手から否定されるようなことがあってもパニックにならず適切な行動を取れるので、安定した関係を築くことができます。
ところが、親が赤ちゃんの生理的な要求に応えてあげられなかったり、親の都合でかわいがったり無視したりと一貫した愛情を与えられなかった場合や、両親の離婚、別居、入院など様々な理由で長期間親戚に預けられる、里子に出される、親から虐待される、育児放棄(ネグレクト)されるなど、愛着を形成していくべき大切な期間に、親の愛情を正しく充分に受けられなかった場合、愛着が不安定になってしまいます。
心の安全基地がしっかり形成されず、不安定な愛着スタイルになり、性格や対人関係、行動に問題が現れるのが愛着障害です。
虐待や育児放棄などの極端な問題がなく、ごく平凡な家庭で育ったとしても、親がいつも不機嫌でヒステリックに叱られていた、夫婦ゲンカが頻繁にあった、褒められるより否定的な言葉がけが多かった、他の兄弟姉妹といつも比較されていた、家事や子どもの世話はしっかりこなしているが子どもの気持ちには無頓着だった・・などで、甘えたいときに甘えられない、頼りたいときに頼れないという状態が続くことも、愛着障害の原因になり得ます。
愛着障害は病気や疾患ではなく、性格的特性で、後天的なものです。現代の日本では、成人の3人に1人は愛着障害を抱えているそうです。完璧な親に完璧な愛情で育てられた人はまずいないので、愛着障害の特徴はある意味誰もが持っていると言えます。
愛着障害の3タイプ
安定した愛着を形成できずに大人になった場合、次の3つの不安定型に分かれます。
1.不安型
依存したり人とべったりした関係になりやすい。
パートナーといつも一緒にいたい、求めてほしい、愛情を示してほしいという欲求が強い。
パートナーが自分と同じようには望んでいないことに不安を感じる。
見捨てられることへの不安が非常に大きく、少しでも「愛されてない)と感じると心が傷ついてしまう。
どちらかと言えば女性に多い。
2.回避型
誰にも愛着を示さず、猜疑的で、人を信じられず警戒し、人との関わりを避けようとする。
自立や自己充足が重要であり、だれかに依存したり、依存されることは好まない。
感情を抑え隠す傾向があり、拒絶することで相手と自分の距離を保とうとする。
自分に自信がないので、責任を負うのがイヤ。
自分をオープンにすることができず、気持ちを表現することにブレーキがかかる。
相手に共感したり気持ちに寄り添うことができない。
どちらかと言えば男性に多い。
3.恐れ・回避型
親密になりたいのに距離を置きたい、人に頼りたいけれど頼れない、矛盾した態度。
近い関係を求めているものの、近くなりすぎたら傷つけられるのではないかと不安になる。
相手を完全に信頼したり、依存することが難しい。
気持ちとは裏腹な行動を取ってしまう。
愛着と結婚生活の関係
愛着に問題があると、広く浅い人間関係ではそれほどでもないのに、恋愛や結婚のパートナーとの関係で表面化してくることが多いのです。
パートナーは親との関係を再現しやすいからです。結婚生活で起こる夫婦のさまざまな問題は、この愛着が不安定であることが原因になっていることが非常に多いのです。
ささいなパートナーの言動で「愛されてない)と感じてしまったり、愛情を感じられないとすぐに浮気、暴言、暴力、家出、モラハラ・・などの極端な行動でその不安から逃れようとします。
特に最近、回避型の男性がとても増えています。
不思議なことに、回避型の夫と不安型の妻のカップルが非常に多いのです。
不安型の妻は夫にべったり愛されたい、いつも一緒にいたい、親密な会話をしたい、いつも気にかけてほしいと強く願います。
ところが、回避型の夫は距離が近すぎると苦しくなるし、感情を表現したり自己開示するのが苦手なので、妻の要望に応えることができません。
そうなると、妻は「愛されていない」とさらに不安になって、夫に不満を言ったり束縛したくなります。
その妻の態度が、夫には「自分は妻に満足してもらえない」ための攻撃に感じるため、さらに逃げ出したくなって別居や離婚を切り出したり、暴言やモラハラ的な行動をすることで自分を守ろうとします。
また、怖れと回避が混ざっていると、見捨てられ不安も大きいので、妻にちょっと大事にされてないと感じるとパニックになって暴言を吐いたり、浮気や家出をしたりします。
近づいても不安、放っておいてもダメ・・悪循環ですね。
心の安全基地を強化すること
この悪循環を断ち切るには、まずどちらか一方が自分の愛着スタイルに気づいて、心の安全基地を強化していくことが大切です。
親の代わりに自分を丸ごと受け止めてくれる存在によって、短い期間で心の安全基地が強化できることもあります。
自分が頼れる人やカウンセラーなど専門家に感情を丁寧に聴いてもらい、親への未解決な感情に向き合ってインナーチャイルドの傷を癒すことで、自分の中に安心感を増やしていくことは大変効果的です。
心の安全基地を強化する方法は、ほかにもいろいろあります。 パートナーの愛着スタイルがどんなものかが分かると、今まで到底理解できなかった相手の行動が理解できるようになります。
そして、自分のなかに安心感が増えてきたら、今度はパートナーの心の安全基地になってあげることができれば最高ですね。
回避型の旦那さんも、結婚生活の中でだんだん「相手に近づいても傷つけられることはない」という安心感が増えてくると、少しずつ心を開いていくようになります。
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