なぜ夢や目標がないのか?
カウンセリングで、相談者さまの夢についてお話をすることがありますが、驚いたことに、大部分の方が「自分が何をしたいのか分からない」とおっしゃいます。
日々の生活に追われて、「何年後にこうなっていたい」「こんなことがしたい」といった夢や目標もなしに生きている方がとても多いのです。
そんなことを言う私も、昔はそうでした。
長期的で具体的な夢も希望もなく、ただ毎日を味気なく生きていました。
自分と向き合い始めてから、本当にやりたいことがいっぱい出てきて、今では1年以内に成し遂げたいこと、3年、5年後に実現したいことがはっきりと見えています。
先日、ある方と「マズローの欲求段階説」について話していた時、あ~なるほど、と思うことがありました。
有名なマズローの欲求段階です。一番下から、
1.生理的欲求(衣食住などの本能的な欲求)
2.安全の欲求(危険・事故・病気などから安全でいたいという欲求)
3.所属と愛の欲求(愛されたい、受け入れられたいという欲求)
4.承認・尊重の欲求(認められたい、尊重されたいという欲求)
5.自己実現の欲求(自分の持つ能力や可能性を発揮したいという欲求)
また6番目に自己超越の欲求があるといわれますが、その段階に達する人はきわめて少ないでしょう。
親が子供に与えるべきものは
下位の欲求が満たされると、1段階上の欲求へと、徐々に上がっていくと言われています。
1~4の欲求は欠乏欲求、5は存在欲求といわれ、質的に異なるといわれています。
自己実現にいたるまでは、4段階の欲求が満たされないといけないのか・・と思うと大変なように見えますが、1と2の欲求は、戦争中であったり甚大な災害のさなかなどの特殊な場合をのぞいて、普通の日本の家庭なら、すでに満たされているでしょう。
3、4の欲求も、考えてみれば、健全な家庭さえあれば、まったく問題なく満たされるはずの欲求です。
お父さんとお母さんが、子どもを愛し、ありのままを受け入れ、認めてあげ、尊重してあげていれば・・・。
親に十分無条件に愛され、安心できて、認められているという感覚があれば、子どもは自己実現の欲求が自然に湧いてきて、自分の持つ可能性を発揮したくなるわけですね。
もし、あなたが夢がない、何をしたいのかわからない、分かっても気力がわかない・・
つまり自己実現したいという欲求がわかないというのなら、もしかして、3と4の欲求を家庭で満たしてもらっていなかったのかも知れません。
逆に、お子さんが勉強しないでゲームばかりしている、やる気が出ない、といったことに悩んでいるとすれば、あなたが子どもの3、4の欲求を満たしてあげているだろうか?と考えてみる必要があるわけです。
親が子どもに与えるべきものは、このマズローのピラミッドを見れば、はっきりしています。
● 安全で快適な環境を用意し、危険から守ってあげること。
● 微笑む、抱きしめる、目を合わす、会話をする・・ことで、愛情を示してあげること。
● 子どもの気持ちを受け止めてあげ、コントロールしようとせずそのまま認めてあげること・
夫と妻が精神的に自立していて夫婦の関係が健全であり、家庭がきちんと機能していさえすれば、子どもは誰でも自己実現へと向かっていくことができます。
本当の自分を生きるためには
マズローの欲求段階説では、下位の欲求が満たされて初めて一つ上の欲求が生じる、と言われています。
ところが、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認・尊重の欲求の4段階が満たされていなくても、自分の能力や才能を発揮している人もいますよね。
両親が不在で食べ物にも困っていたのにも関わらず東大に合格し、幸せな人生を生きている人もいます。
また、その分野で第一人者と言われるビッグな人物が、実は親が大変な人でまともな愛情を受けられずに育った人だったりもします。
この場合はどうなんでしょうか・・?
マズローは、より上位の欲求がわいてくるために現在の欲求が完全に満たされる必要はない、と述べています。
生理的欲求では85%、安全欲求では70%、所属・愛の欲求では50%、承認・尊重の欲求では40%が満たされれば次の段階に移行できるというものです。
「満たされている」という基準もどこまでも相対的なので、ある人はまだ充分でなくても別の人には充分、と感じられるかも知れません。
もう一つ、
自己実現している、と思っていることが、実はそうじゃない場合もあるでしょう。
自分の才能を生かして何かをやることが、実は周りから認めてもらいたいためであったり、誰かを見返してやりたい、あるいは誰かに賞賛されたい、という動機になってる場合です。
これは本当の自己実現とはいえません。
見返りを求めてやっているため、見返りが得られないとすぐに力を落とし、やる気がなくなってしまいますよね。
大きなことを成し遂げても幸せを感じられないかも知れません。
自己実現の欲求からやっていることなら、
まだ結果が出ていなくてもやること自体に幸せを感じるでしょうし、
困難が多くても情熱が冷めない、誰に認められなくてもやりたい、という状態になるでしょう。
これが「本当の自分を生きる」ということではないでしょうか。
幼少期に親から1~4の欲求を満たしてもらった人は、「愛されたい」「認められたい」という欲求にエネルギーを浪費することなく、まっすぐに自分の本当にやりたいことを見つけることができます。
それでは、不幸にも家庭で、親にいつも値引きされてきた、認めてもらえなかった、尊重してもらえなかった・・という人は、自己実現できないのか・・・?
そうではありません。
自分が今、マズローのピラミッドのどの段階にいるのかを見つめてみてください。
「誰かといつも一緒にいたい」「人に嫌われるのが怖い」といった感覚があるなら、所属・愛の欲求段階、
「こんなにがんばってるのに報われない」「忙しいだけで疲れるばかり」といった感覚なら承認・尊重の欲求段階かも知れません。
自分が今何を望んでいて、どの欲求が強いのかがはっきり自覚できれば、本当の自分とつながるのは速いです。
自分が自分を愛する、自分が自分を認める・・ということを通して、自分の欲求をみたすことができます。
人は、自分で自分を成長させる力を備えているし、自分で自分を幸せにすることができるのです。
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